6月はPride Month(プライド月間)と呼ばれ、アメリカやカナダをはじめとした世界各地でLGBTQ+の権利を啓発し、文化やコミュニティを支持する様々な取り組みが開催されます。
LGBTQ+とは?
Lesbian(レズビアン、女性同性愛者)、Gay(ゲイ、男性同性愛者)、Bisexual(バイセクシュアル、両性愛者)、Transgender(トランスジェンダー、性自認が出生時に割り当てられた性別とは異なる人)、QueerやQuestioning(クイアやクエスチョニング)の頭文字をとった言葉で、性的マイノリティ(性的少数者)を表す総称のひとつとしても使われることがあります。 - LGBTとは / 東京レインボープライド
なぜ6月がプライド月間なの?
今でこそ「Happy Pride!」とお祝いムードが目立つプライド月間ですが、そのきっかけとなったのは1969年にアメリカマンハッタンにあるストーンウォール・インで起きたストーンウォール蜂起でした。
グリニッジの数少ないゲイバーだったストーンウォール・インには、NY市警のシーモア・パイン副警部が率いる警察が過剰と言えるほど日常的に手入れを行っていました。そして1969年6月28日の早朝、客たちが警察への協力を拒んだことから数夜にわたる反乱に発展したのです。
全米のゲイバーで警察が日常的に捜査し、多くの逮捕者が出たことに加え、以前からLGBTコミュニティと警察との対立はよく知られていましたし、LGBTコミュニティが抑圧に対して反撃し、組織化したのはこれが初めてではありませんでした。
しかしストーンウォールの蜂起は大衆運動に火をつけ、瞬く間にアメリカ全土、そして世界中に広がっていったのです。
"Hairpin drop heard around the world" ヘアピンの落ちる音が世界中に響き渡った。
最初に群衆が警察官に投げつけたのは「女装したゲイのヘアピンだった」という逸話からこんな言葉も生まれ、ヘアピンを落とす(drop a hairpin)がゲイであることをほのめかすスラングになったこともあったとか。
そんなアメリカにおけるゲイ解放運動の転機ともなったストーンウォール蜂起を記念して、アメリカの主要都市やカナダを中心に6月をプライド月間として社会全体で祝うようになりました。
(Screenshot: Gay and Proud)
プライド月間にはなにがあるの?
現在では、プライドパレード、ピクニック、パーティー、ワークショップ、シンポジウム、コンサートなど様々なイベントが行われ、世界中で数百万人が参加しています。
もちろんお祭りごとだけではなく、ヘイトクライムやHIV/AIDSで失われたコミュニティのメンバーのための追悼式なども行われます。
アメリカ・カナダで開催されるイベントの例
(Photography by Tatiana Rodriguez on Unsplash)
LGBTQ+の人権運動のきっかけとなったストーンウォールのあるニューヨークでは、6月に入ると街中がレインボーカラーに包まれます。
Christina Aguileraがヘッドライナーを務めるイベントが開かれたり、人権活動家によるスピーチが行われたり。華やかな雰囲気とともにしっかりクィアカルチャーの歴史を学びたい場合は、このNYC Prideがオススメです。
25th ストリートから5th アベニューまでの道のりをパレードが練り歩くThe Marchは、今年は6/25(日)に開催され、当日はカラフルな出店が立ち並ぶ予定です。
(Photography by Clay Banks on Unsplash)
ワシントンDCのプライド月間も、NYCに負けず劣らず大規模な祭典が行われます。ワシントンDCといえばアメリカの首都で、ホワイトハウスがある場所。トランプ政権時代には、その保守的な反LGBT政策への抗議活動の一環としてかなりの盛り上がりを見せたようです。
ワシントンDCでは、まず5月の終わりに黒人のLGBTQ+コミュニティのための祭典D.C. Black Paradeが開催されたあと、パレードやクィアの監督の映像作品を上映する映画イベントなどが開催されます(今年のパレードは6月10日(土)でした)。
📍San Francisco Pride(アメリカ・サンフランシスコ)
(Photography by Y S on Unsplash)
アメリカ国内でも最大の規模を誇るのが、このサンフランシスコプライドです。2023年のテーマは「LOOKING BACK AND MOVING FORWARD(過去を振り返り、前に進む)」。
そもそもサンフランシスコは、「ゲイの首都」と呼ばれることもあるほどクィアカルチャーが根付いています。その気候のように陽気な町は移民も多く受け入れていて、アメリカ国内でもとくに多様なバックグラウンドを持った人が暮らす街として知られています。
2023年のパレードは6月25日(日)に開催されます。
パレードに参加する・見に行く前にフラッグなどを手に入れたい場合は、Cliff's Varietyという雑貨屋さんがオススメ!常時レインボーフラッグが掲げられているゲイ・フレンドリーな町としても知られるカストロ地区にあるこのお店には、ドラァグ用のコスチュームやウィッグなども販売されています。
(Photography by Meg on Unsplash)
77の地区から成る、大都会シカゴ。演劇とジャズの街として有名なこの場所では、プライドパレードでも多くのパフォーマーたちが大活躍します。
ドラァグクイーンやパフォーマーを含めた参加者によって形成されるパレードの全長は、6km以上にもなるといいます。
2023年のパレードは6月25日(日)開催です。
📍Key West(アメリカ・カリフォルニア キーウェスト)
キーウェストは、フロリダにあるアメリカ最南端の島です。
ヘミングウェイが執筆を行ったことでも有名ですが、北米で初めてオープンリーゲイの市長を選出したりと古くからLGBTQ+フレンドリーな島として愛されています。そのモットーは、「人類みんながひとつの家族」。
But the best part about our town is our open and accepting attitude. “One Human Family” is our city motto, and our closets are only used for our costumes! - gay Key West
「ここではクローゼットは洋服のためだけに使うよ!=ゲイであることを隠す必要はないよ!」なんて、粋な言い回しですよね。
プライドイベント以外では、アメリカで一番長い、国道1号線の端が見られるという点でも面白い場所です。
2023年のパレードは6月11日に開催されました。
(Photography by Kyle Hinkson onUnsplash)
2003年に同性婚が合法であると認められたカナダ。そんなカナダ最大の都市トロントで行われる、世界最大級のプライドイベントがPride Torontoです。カナダの首相が参加したことでも話題になりましたよね。
カナダの他の都市では、モントリオールとバンクーバーが8月に、カルガリーが9月にプライドパレードを行うようです。
トロントのパレードは、NYCやサンフランシスコと同じ6月25日(日)に開催されます。
※プライドイベントに限らず、このように大規模なフェスティバル期間中はかなりの混雑が予想されます。ケガやトラブルには気を付けて楽しんでくださいね!
プライド月間中に、様々な問題が指摘されていた「LGBT理解増進法案」が衆議院で可決されてしまった日本。ただ、同性婚が認められていないのは「違憲状態」であるという判決が出たりと、少しずつ前に進んでいる部分もあります。
この機会に少し立ち止まって、人権について学び考える時間を作ってもいいかもしれません。
SAF日本事務局
SAF スタディ・アブロード・ファウンデーション(The Study Abroad Foundation)は、2000年に米国インディアナ州の認可非営利教育機関として設立され、日本、中国、韓国を中心としたアジアの大学生の単位認定留学を促進するために活動しています。
SAF日本事務局には10人のスタッフが所属し、留学プログラムを通じて成長し、国際社会で活躍できる人材の育成に取り組んでいます。