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SAF留学プログラム参加学生の体験談

jun_murayama_01.jpg氏名: 村山 淳 (Jun Murayama)
所属大学: 中央大学 文学部 人文社会学科
留学先大学: グラスゴー大学 (イギリス)
留学タイプ: 1年間 (学部授業履修プログラム/休学留学扱い)
留学開始時期: 2012年9月
留学時の学年: 4年生

今回の留学はどのように決めましたか?
中学校のときに母に勧められて読んだ小説『ケルトの白馬』を読んで、ケルト人という人々のことを知ってから、私はケルト人という人々に強い憧れを抱いていました。ツバメの飛ぶ様や、馬の群れが丘を疾駆する様を、抽象的な流線で表す人たち。意味は分からないけれど、とても美しい響きの言語を操る人たち。そんな漠然としたイメージが、私の留学に対する熱意の芽生えだったと思います。
大学に入るまでは、イギリスにいつか住んでみたいという程度の気持ちに落ち着くこともありましたが、大学に入って、ローマ・ブリテンの歴史を学び、また「ケルト人」という人たちに関わる歴史学的な難しさを知って、実際にイギリスの人たちが「ケルト人」とどう関わっているのかを知りたくなりました。そこで、British Councilなどを通して、語学試験や現地の大学の情報収集をはじめました。
スコットランドのグラスゴー大学を選んだ理由は、2つあります。1つは、日本ケルト学会にオブザーバーとして参加していた際に、日本のケルト語研究において、アイルランド語とウェールズ語は盛んであっても、スコットランド・ゲール語については大きな空白が埋められずにいるということを知ったこと、そしてもう1つは、ちょうど私の留学した2013年にグラスゴー大学がスコットランド政府公認のもとに、ゲール語保存運動を本格化させるということを知ったということです。
まだ、日本人にあまり触れられていない分野、そして、これから伸びる可能性のある分野に私も触れてみたいと思ったのが、グラスゴーを選んだ理由です。
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授業内容や授業スタイルなどについて詳しく教えてください。
グラスゴー大学では、大きく分けて2つの科目を取りました。1つはスコットランド・ゲール語で、もう1つはケルト文明の授業です。ゲール語は60分の授業が週5回で、内訳は文法の授業が3回、長文読解、又はゲール語の韻文の朗唱の授業が1回、会話の授業が1回でした。ゲール語文法90%を9ヶ月で終わらせるというのがクラスの目標で、1日に最低3つの文法事項を教わりました。大学の語学としては標準的ですが、慣れない言語でもあり、苦戦する学生も多くいました。しかし、授業外でも、ネイティヴスピーカーと会話する機会や、先生方に相談する機会は豊富に設けられており、ゲール語を楽しく学んでもらおうと、音楽やお酒を利用したセッションも多く開かれました。
ケルト文明は、よくある歴史の授業です。紀元前1000年紀から紀元後1世紀までのケルト語話者の歴史を文献史学と考古学の双方から解明する授業で、週2回の講義と、週1回のゼミで構成されていました。ゼミの授業が特に実用的で、講義で紹介された定説や仮説がどのようにして導かれたのかを、実際の史料を使って学生に結論させることで、歴史学の基礎を学ぶと同時に、知識を実用的に身につける素晴らしい授業でした。中央大学で4年間歴史学を学んだ身としては、基礎的なルールの復習と、イギリスでの歴史学のあり方の双方を実践的に学べました。 

yuri_kanamitsu_02.jpg 現地での生活の様子を教えてください。
滞在していたのは学生寮で、スペイン人とルームシェアをしていました。フラットメイトもルームメイトも良い人たちで、文化の違いからくる齟齬はありましたが、良好な関係を築くことができました。なにかもめ事があったときは、私とルームメイトで音頭を取って、ご飯を食べながらミーティングをして意見を出し合いました。全員が英語を外国語として学んでいたので、うまく伝わらないこともありましたが筆談などを使いながら、相手の話を理解しようとする誠意が全員にあったと思います。
寮の立地がとても良く、買い物と登校には不便しませんでした。街の中心と大学のちょうど中間にあり、歩いて15分で両方に行くことができました。お店の種類も、不便のない程度に豊富で、ウィンドウショッピングを楽しむこともできました。
食事は自宅では基本的に自炊をしていました。チャイニーズスーパーマーケットで米と日本の調味料を調達して、毎週土曜日の早朝にスーパーに出向いて、見切り品の肉を買い込んで、小分けにして漬けて、1週間で食べるという習慣を確立し、比較的安価で健康的に過ごせたと思います。野菜や果物の種類は日本に比べて貧弱ですが、初めて見る野菜を調理して、合う味付けを見つけるのは意外と楽しいものでした。また、現地の人たちからその野菜の調理方法を聞くと、外食では食べられない粗野でも、どこか懐かしい味に出会うことがありました。外食は、とにかく「芋・芋・芋」でした。最初は、フライドポテトの美味しさに感動を覚えたのですが、どこで何を頼んでも大抵じゃがいもがでてくる生活に1週間で飽き、帰国後一ヶ月に至る今も、芋はみたくありません。イギリスは料理が美味しくないと言いますが、味はそれほど悪くありませんでした。ただ、日本でいう定食屋さんのようなものがなく、ファストフードかしっかりしたレストランという二択を迫られることが多々あり、貧乏学生には辛いときがありました。 

yuri_kanamitsu_06.jpg 留学生活の中で大変だったこと、思い出に残っていることは何ですか?
一番大変だったことは勉強だったと思います。しかし、自分がやりたかったことをいくらでもでき、また上達が感じられて、人に褒めてもらえるという環境では辛さを感じることはありませんでした。むしろ辛いと感じたのは、気候です。日の長さの変化が劇的で、冬場は暗すぎて、夏場は明るすぎて、体調を崩すことが何度かありました。また、フラットに湯船がなく、日本で1日1時間以上お風呂に入っていた私は、疲れをリセットできないままベッドに横たわることが何よりも辛いものでした。
加えて、ルームシェアを選択したことも、家で気が抜けない原因の1つだったと思います。前述の通り、ルームメイトは良い人に恵まれたのですが、人の良い悪いに関係なく、文化も言語も違う人が同じ部屋に四六時中いるというのは、想像していた以上に心に負荷をかけていました。

授業以外に取り組んでいたことを教えてください。
留学の主目的はゲール語でしたが、同時にケルティックハープを学ぶということも同じ位、重要な目標でした。渡航後すぐに現地のハープ協会と連絡を取り、1ヶ月後にはレッスンを開始しました。自宅にもハープを借りて、1日2時間から7時間ほど、毎日練習しました。週2回のレッスンとゲール語の歌唱練習も含めると、最も時間を割いたのがハープだったと思います。5月と6月で4回ほどコンサートの前座演奏をして、帰国直前にゲール語のドキュメンタリー映画に、ゲール語の歌をハープと一緒に歌う日本人として出演させていただくこともできました。 自分自身でも、人に聞かせたいと思えるような曲が奏でられるようになり、一生の伴侶として、これからもハープと向かい合って行きたいと思っています。 

yuri_kanamitsu_08.jpg 休暇はどのように過ごしましたか?
基本的にはハープと、ハープのレッスンやコンサートで出会った友達と山登りに行くことが多かったです。ネイヴィス山やロモンド山を登ったり、湖水地方にいったりもしましたし、郊外の比較的裕福な家庭にお邪魔して、ハープを披露する代わりに、ご飯をごちそうになるというような、地元の人たちとの交流をたくさんしてきました。
また、公民館や教会で催されたゲール語のフォークソングとダンスの小さなコンサート(Ceilidh)にも積極的に参加していました。参加した大きい催しは、FIE Leadership Council, Edinburgh International Harp Festival, Celtic Connections, Ceòl na Craig などです。

これから留学する学生に伝えたい留学先大学(プログラム)、留学先国(都市)の魅力は何ですか?
学問的な魅力は、大学の伝統とそれを支えようとしている人たちの矜持です。こちらが積極的になれば、先生方はいくらでもサポートしてくれます。大学が自分のためにあり、自分のやりたいことをいくらでもやらせてくれると信じさせてくれる大学です。 
街の魅力は、英語文化の中に流れるスコットランド文化です。イングランドとは違って、田舎臭くて、だからこそ人の暖かみに触れられる場所がたくさんあります。特に、冬に開かれるケルト文化圏最大の音楽祭、Celtic Connectionsにはぜひ行ってみてください。2週間で大小100を越えるコンサートやワークショップが開かれるお祭りで、世界中のケルト音楽に携わるアーティストがやってきます。
お酒が飲める人は、Ben NevisとThe Park Barという2つのパブにはぜひ行ってみてください。夜な夜な、アイリッシュやスコティッシュの音楽が演奏され、地元の美味しいお酒を飲むことができます。そして、気後れせずに色んな人に話しかけてみてください。10ヶ月の滞在で数えきれないほどパブに行きましたが、話しかけて嫌がる人には一度たりとも会いませんでした。

yuri_kanamitsu_03.jpg 留学で得られたものはどのようなものがありますか?
多すぎて書ききれないほどありますし、自覚できてないこともたくさんあると思います。私が今思いつく限りのことを並べて行くならば、まず「人の話を聞く力」です。自分の母国語ではない言葉で会話する際に、自然と相手の話をよく聞こうとしていました。また、英語圏では挨拶のあと、自分の近況を尋ねられたら相手の近況も聞く、Give and Takeの精神が未だに強く残っていました。帰国後、「日本語で人の話を聞くこと。」、そして「相手が聞いて欲しいことを聞く。」という自然なことを衒いなく出来るようになったと思います。
つぎは、「自信」です。「自分が何かを出来る。」とか、「ここなら誰にも負けない。」というような自信は未だにありません。しかし、「誠意を持って臨めば、多くの人が誠意を持って応じてくれる。そして自分にはその誠意を持とうとする努力が出来る。」ということに気づけたのは大きいと思います。
そして、何よりも大切にしたいのが「人とのつながり」です。ハープとゲール語を通して、多くの人に出会い、多くの人が私を記憶してくれています。同じように、私も多くの人を記憶していて、また彼らのもとに帰りたいと思っています。実務的な関係であろうとなかろうと、人と人の間に自分があるという実感をくれる人たちに出会えたことは、本当に幸運だったと思っています。
そして最後に、「楽しむこと」の大切さを再確認できたことを挙げておきたいと思います。大学で社会問題の研究などをしていると、理屈ばっかりが頭の中を巡り、勝手に結論して勝手に絶望することが多々あった私ですが、音楽と美しい言語に触れて、それを楽しみながら生きている人たちに出会って、「楽しんでいいのだ。」と思えたこと、それを思い出したことはとても大きい収穫でした。「人生は悲しみ6割、喜び4割くらいで生きていくといい。」とおっしゃった方が居ましたが、今は気負いせずにそんな行き方を目指していける気がしています。

yuri_kanamitsu_05.jpg 留学経験を今後どのように 生かしていきたいですか? 
実用的な面では、来年に再度グラスゴー大学の修士課程へ留学することを決意し、準備を進めています。自分が何処まで出来るかはまだ未知数ですが、ゲール語保存運動に外側の人間として関わると同時に、日本でスコットランド・ゲール語の認知度を少しでも上げる努力をして行きたいとおもっています。あちらで一生懸命作って来た人脈を厳選し、絶やさぬようにして学問の道に進むつもりです。
概念的な面では「多様性を保存することの重要性」を、留学経験者として、また、少数言語を学ぶものとして訴えて行きたいと思っています。今の段階で、ゲール語が何の役に立つのか、私は社会的に意味のあることをやっているのかは分かりません。しかし、「今の世代よりももっとたくさんのことを知って、今よりも賢くなった後の世代の人たちに出来る限り多くの選択肢を残す。」という一点において、文化の多様性を保全する運動に携わって行きたいと考えています。

その他に伝えたいことがありましたら教えてください。
これから留学へいく人へ
留学の目的は人それぞれだと思います。語学を学ぶため、現地のことを学ぶため、良い思い出を作るため、もしかしたら、今の日本から出たいという一心で目指している人もいるかもしれません。それでも、私は留学に行く人たちに、現地の伝統や文化に触れようとする努力をして欲しいと思っています。恐らく、自分のことや自分の育った場所のことを知って欲しいという欲求は、今のコミュニケーションの根本にあるものです。だから、こちらから相手のことを知ろうとすれば、多くの人が喜んで様々なことを教えてくれます。同時に、自分の国や故郷について気づいていない多くのことに思いを馳せる機会も与えてくれるでしょう。ですので、ガイドブックに頼って、観光をして写真を撮るだけで休暇をつぶすのではなく、もっと身近なところに目を向けて、現地の人たちの生活と交わって欲しいと思っています。簡単なことではありませんが、真摯であることを忘れなければ、きっと多くの人が手伝ってくれます。どんな形で接するかは場所によって違うと思いますが、どうかその土地と人に興味を持って行動する勇気を持って、留学を楽しんで来てください。

 

 
   
Last Updated: 4/2/14